千葉県の道標インデックスデータベース(IDB)について       加来利一

 1978年頃から、PCを使用した分析手法(当時はPCとは言わずマイクロコンピューターと言っていた)を仕事で使うこともあり、PCによるデータベースの理論と構築の実践を勉強した時代(環境庁緑の国勢調査、事業場安全衛生水準評価、疫学調査、人事管理、災害分析、化学物質有害性調査及び予測、販売管理、安全衛生試験総合管理、公益法人会計等、また、国立安全衛生情報センター、海外安全衛生衛生情報センター、電子政府システム)もあった。

 インターネットの時代はこの間に開花したので、ホームページの作成業務も行った。

 70才の古希を迎えたときに、このデータベースの技術(私の経験をみてもおわかりいただけるように、その応用範囲は無限ともいえる)の知識を活用して、第二のふるさとともいえる千葉県で、データベース化できるものはないかと考えた。

 60歳頃、我が姓である「加来、賀来」のルーツのホームページを作成した際にわが国の歴史の面白さを知ったので、対象を歴史関係にしぼって下調べをした。

 房総には約3万年前から人類が住んでいたようで、石器時代、縄文時代、弥生時代と遺跡も多く、貝塚や古墳も各地にあり、専門家の調査も進んでいる。

 さらに、飛鳥、平安時代には国分寺、国分尼寺等の遺跡や万葉の遺跡もあり、平安末期には千葉氏の、鎌倉時代になると頼朝が挙兵し再起した由来の地や里見氏の遺跡も多い。

 江戸初期には、外様の里見氏を牽制するため親藩が多く配置され、戊申の役では、姉ヶ崎戦争など興味のある事件も多く起こっている。

 また、社寺や仏像、文化人の足跡なども数多くあり、へんぴな東国という印象からはほど遠く、テーマを決めるのに悩んだ。

 結局、房総街道とか久留里街道とかまた、坂東33カ所の巡礼道などの道しるべが一応調査はされているが、位置の同定が不十分なのと、最近の東関道や圏央道の工事で失われたり移設されたものが多いと聞いたので、千葉県内に現存記録がある道標をインデックス化するデータベースを作成して、県民のみなさまの研究や道標巡り、街道巡りなどのお役に立てるようにしようとこのテーマを選んだ。

 早速、同好の士が多い県の博物館内にある房総石造文化財研究会に加入して、基礎情報の収集と、なにしろ、道標の基礎知識は皆無だったので、石造物の専門家のご指導を受けた。

 端的に言って、県全体としては、道標情報は把握されてなく、各市町村の史誌に文化財や金石文として記載されているくらいであったが、その数は江戸時代初期から昭和までで約2000基ほどであると推定された。

 これなら、77才の喜寿(2010年)くらいまでには、インデックスとしてのデータベースを構築するのは、なんとかなりそうだとさっそく、地元の市原市から調査に着手した。

 幸いにも予定どうり2009年の10月に現地調査を完了し、初版のDVDが作成可能となった。

 これも、ご協力を賜った県及び各市町村の関係者や房総石造文化財研究会の会員各位のおかげであると深く感謝している。

 もっとも困難であったのは現地で道標を見つけ出すという作業であった。

 調査結果については、ラップトップパソコンにGPSをつないで、現地で緯度経度を特定し、インターネット上で公表されている地図にプロットするとともに、ホームページ上に一覧表と現状の写真を掲載するという方法で発表することとし、野外調査を整理した段階からホームページで発表していた。

 これを見ていただいた方々からいろいろな情報や激励をいただいた。ホームページのアクセス数は5万件を超えた。

 また、最近の電子地図特にGoogle Mapの進歩は著しく、都市地区などではストリートビウで、画面上で道標を直接みることができるほどである。

さらに、Google Earth上で明治初期の地図(迅速測図のフランス図)を農技研が発表されたので、これに、道標位置を重ねることもできるようになった。

千葉県の道標IDB第2版(2011年4月)の制作とその使い方等

 千葉県の道標インデックスデータベースを制作し、ホームページやDVDで公開してから約2年間経過したが、その間多数の方から新情報を頂き、約150基を追加することができた。情報を提供していただいた方々には感謝申し上げる。

そこで、第2版のDVDを制作するとともに、ご要望が多かったので、一覧表と若干の分析結果を紙面で添付することとし、千葉県内の図書館等に寄贈することとした。

 @ 初版と同様に、将来の利用(古道の研究や、公民館活動での趣味としての古道の訪問等)のため、道標の現位置を特定することと現状の写真を記録することを目標とし、 位置の特定は、GPSによる緯度、経度に拠った。(世界測地系で統一した)

 道標の現況の記録は映像の明暗や文字の読みとりのための加工が容易なデジカメを使用した。

 A 構成と内容は、表の形とし、列部分は、固定的な部分(緯度、経度、所在地、塔種、記年等)と記述部分のように精粗が多い部分(内容)とに分けた。

 したがって、データーベースでなく初版と同様にIDBと名付けた。

 B 表は、エクセルを使用して、初期のHTML言語で記述して、串刺し集計や検索集計に便利なものとした。アクセスやDB言語が使える方には、このような加工は容易であろう。

 C 写真はアドビ社のフオトアルバムを使用してギャラリイ形式とリンクした。表の写真の欄の該当する行をクリックすると小さい写真(サムネイルとよばれる)がでる。 サムネイルをクリックすると拡大写真をみることができる。

 戻るときは、ブラウザのバックボタンを使用する。

ここまでは、このDVDをPCに挿入し、index.htmlをクリックすることによって利用できる。

 D PCがインターネットを利用できる環境にある場合は、Alps Map(現在はYahoo Mapにリンク表示)を利用して最高で3,500分の1の程度の精度で地図上の位置を参照できる。

  また、江戸時代の道標の位置については、表の上部にあるアドレス(http://)をクリックすることによって、Google Mapによって、位置を参照することができるとともに、航空写真や場所によってはストリートビュウもみることができる。

 また、地図左側の表から道標の番号を選んで、クリックすると道標の内容と写真ギャラリィをみることもできる。 縮尺の変更は地図のバーで行う(詳しくはGoogle Map参照)

 E 表の場所欄は過去の情報によって記録したので、緯度、経度が優先する。

  ただ、GPSの精度が不確定であるため6m程度の誤差があることもある。写真を参考にして探してほしい。

 さらに、KMZフアイルを作成することによってGoogle Earth上に展開することもできるし、公開されている迅速測図上の概略の位置を知ることもできる。

  F 塔種はとりあえずの集計のため統一的に記録した。

 G 内容は、千葉県立中央博物館所蔵の房総石造文化財研究会の調査資料及び各市町村資料並びに故金田英二氏の房総の道標資料から引用記載したものが多い。正確には現地で現物調査をしていただきたい。

 H 石造物番号と金田番号は、それぞれ、房総石造文化財研究会の過去の調査又は各市町村の調査及び故金田氏の調査の番号である。

まだまだ、データの漏れや誤りがあると思うが、ここまでIDBを完成できたのは、県各市町村、房総石造文化財研究会の関係者や故金田英二氏それに現地でご協力を賜った多数の方々のおかげであると深く感謝している。

道標とは、場所または方向を案内するものを言っているが、

 @ 一般の街道を示すもの

 A 巡礼道を示すもの

 B 集落や、寺院を示すもの等があり、

 年代的には、江戸時代のものと明治以降のものとに大別される。大正以降のものには、天皇の即位の御大典記念等として、地区の青年団や青年支団が 建設したものも多く見られる。

 町石や道路元標、境界標などの扱いがなやましいが、一応、調査出来たものは収録した。

 搭種別では、庚申塔、馬頭観音塔、地蔵塔、月待ち塔、巡拝塔、記念塔、道標などいろいろである。

 現在の一覧表では、千葉県でもっとも古い道標は延宝6年(1678年)の東庄町諏訪神社内の供養塔で、次は、延宝8年(1680年)の木更津市吾妻神社内の庚申塔である。

 一般的な保存状態は、石質にもよるが、花崗岩のものは最近の酸性雨の影響で、腐食がひどくなってきている。また、道路工事、土地整理事業などで、元の位置から移転されたものや、破損、紛失してしまったものも多い。 盗難にかかったものもある。

 しかし、土地所有者の方や付近の住民の方の努力できれいに保存をされているものも多く、感謝の限りである。 民俗文化財として、後世に伝えていきたいものである。

世間のみなさまが少しでも道標に興味をもっていただけるようになったら有り難いし、研究者の方のお役にもたてばさらに幸せである。。

県の全域を網羅したこのIDBは、多分、我が国で初めてのものであると自負しているが、野外の文化財の所在の確定には、GPSに拠る位置確定が欠かせないものになり、また、地図ソフトの無料開放などにより、散策や観光などにもますますお役に立てるようになると思う。また、このソフトは、易しいHTML言語で構成しているのでソースをみて参考にしていただきたい、

 そのため著作権については、商用を除いて使用自由としているので各方面でご活用いただければと思う。

 IDBの今後の保有については、現在のホームページを生涯維持したいと思っているが、 最新の情報によると世界中の電子情報を諸所で保存するプロゼクトが進んでおり、アメリカ所在のアーカイバー(電子図書館)では、すでに1500億件の電子情報を保有している。この中にはアラビア語でかかれた情報もある。国際的な著作権法の考え方は、悪用する目的(多額の利益を得る海賊版は悪用に当たる)以外では、著作物の複製は自由というのが常識となっている。

 日本もいずれ著作権法が改正され、アーカイバーに参加することになるとおもう。すでに、日本国外にクラウドサーバーをおいて、日本語のアーカイバーを造ろうとしている団体もあるそうである。特許権と違って、情報の利用は自由であるべきであるという考え方から、過去の情報を電子的に蓄積して活用しようとしているのである。こうなると媒体や端末の変革にも対応が簡単になるので、副次的な問題が発生するとは思うが、歓迎したい。

質問、情報、要望などは、

電話0436−60−5025又はtosi3311@gmail.com

お送りいただければ幸いである。

現在のIDBのインターネット上のアドレスは、http://kaku-net.jp/douhyou/index.html である。